「この前の返事だけど…」

「……うん」

「ごめん。やっぱり代わりにするとか、そういうことは出来ない」

「…そう言うと思ってた」

「…悪い」

「ううん、私もはっきり言ってもらえて、スッキリしちゃった」


そう言って、明音ちゃんは明るくスタスタと歩き続ける。


一度もこっちを見ずにまっすぐに歩き続けていた。


すると、そのまま話し始めた。


「茜のこと、ちゃんと考えてあげて。そして守ってあげてね」

「…ああ」


明音ちゃんは明るい声色で、茜を気遣ってくれていた。


これからの茜を受け入れたいと思う。

そして守りたいと思った。


「私、家こっちだから…」


明音ちゃんが分かれ道の先で、右側を指す。


それは俺の自宅とは逆方向だった。


「じゃあ、送るよ」


もう夜も遅い時間だ。


けれども明音ちゃんは遮るように大きな声をあげていた。


「送らないで!」

「え?」

「そういう優しさはダメだよ」


そう言って、彼女は角を曲がって歩いて行った。

やはり一度も振り向かないままで。


俺は彼女に「好きになってくれてありがとう」って言えなかった。


たった一言を言えなかった。


彼女にはっきりと言うだけで、慰められなかった。


どうしたらいいのか分からなかったんだ。