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こんなところで出会ってしまうなんて。


神様のイタズラなのか。


それとも俺たちの行いが悪かったからなのか。


「茜…」


貴之は彼女の名を思わずつぶやいていた。


今日は日曜日。

貴之は明音ちゃんにデートに誘われていた。


その誘いでやって来たのは隣町の水族館だった。


茜は裕人の腕をしっかりと握りしめていた。


胸が苦しくなって、二人を見たくなかった。


けれどこれが現実なんだ。


「貴之くん、行こう」


明音ちゃんは優しく言って、腕をひっぱってくれる。


俺は動けないぐらい固まってしまっていた。


「…貴之くん、もう辛い
思いはしなくていいからね」

「…茜も行こうか」


裕人と茜はそのまま横を通り過ぎようとしていた。


俺の横を茜が通り過ぎる。


顔は彼女を追っていた。


瞬間だった。


茜はすぐ隣でガクリと膝から崩れ落ちた。


「茜!!」