小学4年生の時、隣の部屋からガタガタと変な音が聞こえてきた。


まさかと思って家に入ると茜は危険な目にあっていたんだ。


涙を浮かべていた彼女の腕をとって、2人で逃げたよな。


駆けこんだのはこの水族館だった。


お金も何も持っていなかったけど、館長さんは俺たちを優しく入れてくれたんだったよな。


茜が変わってしまったのは俺のせいなのだろうか。


「懐かしいな」

「…そう…だね」

「そうだ。次は茜の好きな
イルカを見に行こうぜ!」

「…そ、そう……だね」


そのまま2人でイルカショーに向かって行った。


その瞬間だった。

茜は俺の腕を掴んで、後ろにサッと隠れた。


「え!?」


俺が手をつなごうとすると振り払った茜が、俺の腕を掴むなんて。


有り得ない出来事に、俺は正直戸惑った。


何が起こったのかと思って焦った。


気持ちをまぎらわせるために、正面を向く。


正面からは仲良さそうに歩く、一組のカップルの姿があった。


それを見て、俺も絶句した。


だって、そこにいたのは貴之と1人の女の子の姿だったから。


俺たちは互いの目がぶつかり合った。


貴之もその女の子も驚きを隠せない表情だった。