そして時は過ぎ、ついに訪れた日曜日。


裕人は今日こそ決めるつもりで、駅前で茜を待っていた。


この3日間ぐらいは放課後にも茜と会っていた。


今までの彼女とは違ったけれど、傍にいられることが嬉しかったんだ。


「茜!」


名前を呼ぶと、こっちを見てゆっくりと歩いてくる。


「…眠い」


茜は着くとすぐにそう言った。


かわいらしく小走りで駆け寄って「待たせてごめん」くらい言えばいいのに。


「行こうか」


俺は茜の手を取ろうとしたが、あっさりとかわされた。


昔なら、こんなこと無かったのにな。


2人は向かう。

思い出の町に向かって。


「ここって…」


茜は立ち止まった。


「そうだよ。
茜を初めて守ったところ」


茜が母親の恋人に手を出されそうになった時に初めて助け出して逃げた場所。


それがこの水族館だった。


「懐かしいなぁ。
あの時と全く変わらない」


茜は何も言わずに、うつむいていた。


「行こうか」


そして中に入って行く。


あの時の決意を俺はしっかりと覚えていた。