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試合に俺は負けた。

悔しくて、情けなくて仕方がなかった。


茜のことがあったのもあるけれど、自分の力の無さが一番悔しかった。


俺の全身にあたる雨は痛くて、突き刺さるようだ。


「くそっ」


何度悔しがっても同じ結果だと分かっていた。


そこへ傘をさした茜が、明音ちゃんと共に現れた。


茜がこの試合を見に来ていたことを知って、もっと辛くなった。


「茜、
見に来てくれたんだ!」


裕人が茜に明るく声をかける。


「あのさ、さっそくだけど
話したいことがあるんだ…」

「…話すことなんてない」

「そんなこと
言わないでくれよ」


そう言いながら裕人は茜の腕を引っ張り、人の目につかない場所へ移動していった。


俺は目で彼女を追うだけで引き止める資格がない。


もう俺が彼女にしてあげられることは何もないから…。



彼女の傍にいるのは俺の役目じゃない。


これが一番いい結果だと分かってしても、胸が痛んで仕方がなかった。