分かっているよ、そんなこと。


でもあたしには、そのキレイな部分を否定してしまうんだ。


心が醜くて、腐っているから。


ここが明音と違う部分だ。


あたしが愛されたいと、愛したいと思う気持ちから、逃げてしまった結果だった。



すると、急にこっちを向いた。


明音の目とあたしの目が合う。


「本当に茜ちゃんは
何も思わないの?」

「何が?」


そのまま明音は涙を拭って、真剣に目が合った。


「夏に言った言葉、
取り消すね」

「…は?」


悪い予感で胸がざわついた。


「貴之くんへの気持ち」

「つまり
何が言いたいわけ?」


降るはずない雨がポツリポツリと降り始める。


観客は急いで帰り支度を進めていた。


「明音。
あたしそろそろ帰る…」

「貴之くんを愛してる」


遮られた言葉は雨の音も周囲の音も全て吹き飛ばした。