そんなあたしを不気味に思ったのか、奈緒とかいう女は知らずにどこかに行ってしまった。


あたしは気にしないでグラウンドに目を向ける。


悔しさのあまり、泣き叫んでいる選手たち。


泥まみれのユニフォームで涙を拭っていた。


そして、キャプテン同士が固い握手をする。


そして抱き合っていた。


それに従って、ほかの選手たちも互いに握手をする。


最後に貴之と裕人が握手をして、お互いに抱き合っていた。



摂弥高校の選手は泣き叫んでいた。


貴之も男泣きをしていたんだ。


そこに蒼次が肩を組んで慰めているようだった。


「なんか、
カッコいいね」


隣にいた明音が急に言葉を発した。


まだ涙をぼろぼろと流して。


一生懸命にまっすぐな視線を向けている彼女。


あたしは明音の言葉が理解できなかった。


何がカッコいいのか分からない。


負けて、泣いて、勝手な友情を作って…。


「カッコいい?」


あたしは驚きのあまりに聞き返す。


「カッコ悪いけど、
カッコいいよ」


明音の視線は泣いている貴之たちを見つめていた。