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試合はお互いに点が決まらないまま、進行していく。
前半が始まってもう30分くらい経った。
ただ時間だけが過ぎていく。
お互いに一歩も引かない。
気迫がものすごく伝わってきていた。
「蒼次!」
蒼次にパスを出すが、すぐにカットされてしまう。
「戻れ!」
キャプテンの声に従ってすぐさま戻る。
それでも相手のスピードは速い。
俺は裕人をマークしていた。
そこに裕人のところにボールが来る。
そのまま、すぐに飛び出してドリブルで突破していく。
俺も追いかけた。
しかしフェイントをかけられた。
俺がフェイントにつられた隙に裕人は俺の後ろから抜き去っていく。
「くそっ」
ただまっすぐにゴールに向けて突き進んでいく。
俺との距離が、どんどんと離されていく。
近くにいた陽平が止めようと飛び出す。
同じようにチームメイトも飛び出すが、キレイにかわされていく。
ついに裕人はシュートを放った。
まっすぐなストレートを。

