最初に出会った茜ちゃんの表情は何もなくて、ただ怖いだけだった。
何を考えているのか分からなかった。
でも最近思うの。
あまり違いはないけど、心の表情が少しだけ柔らかくなったような気がする。
今日、試合に来てほしい理由ははっきりと分からない。
いつか自分で来てくれるまで貴之くんは待つだろう。
でも今回は、今日じゃないといけない気がしていた。
蒼次くんの表情もいつもと違う。
なにより貴之くんの顔が違った。
息切れしながら走り続ける。
方向音痴な私でも、まっすぐに突き進む。
迷わないぐらい何度も茜ちゃんの家に通ったから大丈夫。
自分を信じて突き進もう。
途中で友達の奈緒に電話を掛ける。
実は行く前に頼んでおいた。
電話を鳴らしたら試合の状況を教えて欲しいと。
奈緒は私に分かったとだけ言ってくれた。
「今、どんな感じ?」
『さっき始まったところ』
「それで?」
『今のところ、こっちが
押してるようにみえる』
「ありがとう」
そして再び走り出した。

