そしてフィールドに並ぶ。
隣にいる貴之に蒼次は話す。
「貴之、茜は来る」
俺の言葉に貴之は目線をボールから俺に向けた。
視線を感じたけれど俺はまっすぐに前を見て続ける。
「俺は信じる。お前が
信じなくてどうするんだ」
「…そうだよな」
「いつも通りにプレーしろ。フォローしてくれるチームメイトを信じろ」
「ああ」
貴之は分かっているよって加えて言った。
でも本当に大丈夫な気がしない。
俺が見たい顔はその顔じゃない。
さっきよりは緊張がほぐれたみたいだけど、まだ硬い顔をしていた。
茜が来てくれたらきっと良いプレーをする。
だから早く来てくれ。
ついにホイッスルがピーーーッと鳴り響いた。
***
あたしはとにかく走った。
茜ちゃんを必ず連れて行くために。
この前からみんなの様子がおかしいのは分かっていた。
きっと文化祭の出来事がきっかけだって分かっていた。
でも何も口に出さず、知らないフリをしていた。
きっといつかちゃんと話してくれると思っていたから。

