あの時、傍にいるのは自分じゃないと悟った。

何も出来ないことが悔しかった。


でも今はそれでも構わない。

サッカーも出来ない。

これからの君を見ることも出来ない。


それが辛い。


生きたい。

君の傍じゃなくていいから。


生きたい。

君ともう一度、逢いたい。



過去の走馬灯を見たくないと思った。

これ以上、君を脳裏に刻むのは嬉しいのに、悲しい。

どうしても、悲しい。


しかし残酷にも走馬灯は流れていく…。



***


あの事件から1週間が過ぎた。


少し肌寒くなり始めたこの季節。


実はこの前からサッカーの秋季大会が始まった。


高校3年生の先輩にとっては最後の大会だ。


去年よりも一層、燃え上がっていた。


しかし茜はやっぱり応援に来てくれなかった。


もう、夏にした約束忘れているかもしれない。

そして昔交わした約束も。


俺がサッカーを続けているきっかけも忘れている。

この学校に来た理由も全部忘れているだろう。


そして、この大会が俺にとって最後になるなんて誰も気づいていなかった。