「だったら…なんで…」

「あれは…今は言えない」


どうしても言えない。

あれは茜だってことを。


言いたくないんだよ。

彼女のためにも。

……俺のためにも。


蒼次は仕方なさそうに大きなため息をついた。


あきらめるようだった。


「分かった。
今はお前を信じるよ」


溜息をついた蒼次は仕方がないと言うようだった。


「ありがとな」

「もしも困ったことがあれば遠慮なく俺に言えよ。相談ぐらい乗ってやるからさ」


俺は「ああ」と頷いた。


当分の間は、この噂で持ち切りだろう。



でも蒼次に言われて心が定まったこともある。


茜が好きだってこと。


たとえ裕人との間に何があっても俺の気持ちは変わらないということ。


そして彼女をもっともっと知りたくなったこと。


今更かもしれないけど大切なことだ。


だから俺は駆け出した。


真実を知るために。