そう、それは突然の出来事だった。

「好きになりました。」

誰に向けられた言葉だろう。
ジッとこちらを見据える瞳を、魂を抜かれた感覚でポカンと眺め返す。

私から視線を外そうとしない「彼」は、あぁ…もしかして、「その言葉」は私に向けたものだったのだろうか。

その行動が何を意味しているか、頭の中ではきちんと理解出来ているのに、あまりにも非日常的な出来事についていけず、ただただ、「彼」をポカン、と見つめ返していた。



「あの、無理を言って君を困らせている事は解っている。
一目惚れなんだ。もう止められない。出来れば直ぐに、叶うなら今此処で、君の返事が欲しい。」

「え…っと…。」

射抜かれそうなその視線から、逃れたくても鋭過ぎるソレからは、逃れられそうにない。

「あの…。」

自身でもはっきりと分かる程に震えた声。

「彼」の揺れる眼差し。

カラン、とグラスの中で音を立てる氷が、止まった時を動かした。