僕の可愛いお姫様

握ったままのスマホをポケットに入れて、梅雨李に笑いかける。
とにかく今は、目の前の事を片付けなくては。

「じゃあ、行ってくるね。
梅雨李は何も心配しなくていいから、良い子に待ってて。」

彼女の返事を待たずに、さっさと準備を済ませて、部屋を出た。

久しぶりの陽の光に視界を狭める。
眉間に皺が寄るくらい、快晴だった。

生活に必要な物をあれこれと頭で考えながら、莉世と「あいつ」の事も考える。

その他の連中なんてどうでも良い。
放っておいてもどうせ、あっちから居なくなる。
人間なんて薄情なものだ。
自分より大切な他人なんて存在しない。
自分より確かな正義なんて存在しない。

そうじゃないのが、莉世と「あいつ」。
親友「だった」、過去のあいつら。

だから余計に厄介なんだ。

情なんてとっくに無い。
今在る確かな物は、梅雨李への愛だけ。
しかし梅雨李はどうだ?

いや…。
そんな筈は無い。
いつか絶対に解るよ。
この世で一番大切な物は何か。
例え悲しむ事になったとしても、それもほんの一瞬だけ。

直ぐに終わる話だ。