僕の可愛いお姫様

「お腹空いたね?食べようか、冷めないうちに。」

テーブルに置いたグラタン皿とスプーンを持って、梅雨李に差し出す。

グラタンを一瞬見ただけで、梅雨李は弱々しく首を横に振る。

「…要らない。」

消え入りそうな、小さい小さい、弱い声だった。

「お腹、空いてない?」

訊けば梅雨李はまた同じ動作を繰り返す。

「要らないっ…。食べたくない。そんな気分じゃないし…こんな状況が続くなら衰弱した方がマシよ…。」

哀しい事を言うもんだな、と思った。
梅雨李から突き付けられる言葉は、単なる「棘」でしかないのに、しかしソレを許容する自分がいる。

疲れているんだろうと思った。
こんな風に生活が一変してしまえば無理もない。