僕の可愛いお姫様

「このまま」でいれば誰も傷付かず傷付けず、笑って過ごせるだろう。
そして俺は泣く。

君に触れ、君の笑顔を受け入れ、本当の意味も種類も知らないままの君の「好き」や「大切」を受け、笑う。
そして俺は泣く。

永遠に完璧にはならないままの君との関係を抱き締めたまま、誤魔化しながら君の傍に居る事は、もう無理だった。

少しくらい壊したっていいだろう。
そんな無茶苦茶を抱えたまま、俺はもうその重さに耐えられそうにはなかった。

躰の奥からふつふつと沸き上がる感情をグッと抑え込んだまま棚に近付き、無意識にか意識的にか、俺は腕を振るっていた。

ガシャンッとけたたましい音を立てて、写真立ては梅雨李の傍に飛んで、落ちた。

ビクリと肩を震わせる彼女は、とても小さな生き物だった。

粉々に割れた写真立てのプレートで梅雨李が怪我をしなかっただろうかなどと、冷静に考えていた。
写真立ての足も折れ、ソレはもう二度と、立つ事は出来ないだろう。

落ちた写真を拾い上げ、もう何度目かの躊躇を押し殺して、俺はその写真を二つに裂いて、丸めて捨てる。

「どうして…。」

震えるその声を無視して、俺は梅雨李に笑いかける。