翌日から、子爵家での新しい生活が始まった。
午前中と午後、二時間ずつマーガレットを教え、それ以外の時間は本を読んだり、ピアノを弾いたりして過ごした。
子爵が書斎の本を読む許可を与えてくれたので、時間を見つけてそれらを読んでいった。
子爵家には大勢の使用人がいて、それを束ねているのが執事だった。
夕食は彼女一人で摂ることも多かったが、ごくたまに、子爵が一人で屋敷にいるような時は、呼ばれて子爵やマーガレットとともに食卓につくことがあった。
ひどく緊張するし、食事があまりに素晴らしくていつも驚かされる。
そんなときは、子爵が書物について尋ねたり、今日のできごとをマーガレットが報告したり、といった具合で、日々は満ち足りて過ぎていった。
若い当主は、とても忙しいようだった。いつも出かけてばかり、とマーガレットがこぼしている。
齢の離れた兄を、崇拝するように慕っているのに、接する時間があまりに少ないのが、ローズにもだんだんわかってきた。
たまに屋敷にいても来客ばかりで、子爵が一人でいることなど滅多にないようだ。
だが、ついに機会が訪れた。
