ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜


「さあ、新しい先生を紹介するよ。ミス・ローズマリー・レスターだ。明日からしっかり勉強しようね。がんばったらご褒美をあげる」

 ローズはマーガレットに膝を折ってお辞儀した。

 小さなマーガレットは兄からローズに視線を移し、少し恥ずかしそうに兄の顔を見あげてから、挨拶を返した。

「はじめまして。どうぞよろしく」

 どうやら手におえないわがままっ子でも、ひねくれっ子でもなさそうだ。 嬉しくなって初めての生徒に心からの笑顔を向ける。

「よろしくお願いいたします。マーガレット様」

 マーガレットが去った後、子爵はローズに言うともなしに言った。

「ぼくらの母は、妹を産んで半年後に亡くなってね、あれは母を知らずに育ってる。だから寂しがり屋だけど素直ないい子だよ。ぼくも忙しくてなかなかかまってやれない。あの子を頼みます」