子爵はローズの体に手をかけ、乱暴に自分の方に引き寄せた。びくっとした彼女が身を振りほどこうとするのを感じ、さらに逆上した。
突然力いっぱい抱きしめられて、ローズははっと息をのんだ。
どくどくと脈打つ互いの鼓動が、伝わってくるほどだ。
あわてて身体をもぎ離そうとしたが、彼の腕はさらにきつく絡みついてきて、片手で無理やり顔を押し上げられた。震える唇に、彼の唇が荒々しく襲い掛かる。
いけない……! ああ、神様……。
目を閉じ、なんとかその激しい攻撃から逃れようともがいてみても、男の力の前にはどうすることもできなかった。むしろ、その甘美な誘惑に耐えかねて、自分からそのキスに応えてしまう。
彼女の反応――自分と同じくらい切羽詰った切実な反応――を快く感じながら、エヴァンはしばらくの間、我を忘れて彼女の甘美な唇を味わっていた。
それこそ、飢えた者が食物をむさぼるように。いや、飢えていたのだ。心底から……。
ふと、唇に塩辛いしずくを感じ、はっとして顔を上げた。
乱れた吐息……。閉じた目から涙が溢れ、ほんのり紅潮した頬を濡らしている。
