唖然としている牧師の脇をすり抜けて、子爵はローズの手をぐいぐい引っ張り外に連れ出した。
振り向きもせずに、牧師館の裏手にある木立の中まで連れていく。
ローズは何とか手を振り切ろうとひねったり引っ張ったりしたが、万力のような力で捕まれ、とても無理だった。足早に歩く子爵に、次第にローズの息が切れてくる。
雑木林の中でようやく掴まれていた手をもぎ放した途端、彼が振り返った。全身が怒りと緊張でピンと張り詰めている。
「どういうつもりなのか、分かるように説明してもらいたいね。ぼくは君にキングスリー家で待つようにと言ったはずだが……? なのに戻ってみたら君はいない。挙句にこんな所で他の男とよろしくやっているとは。はっ、予想もしなかった。心底あきれ返ったよ」
いったい何を怒っているの?
訳がわからなかった。突然彼がここに現れたこと自体が信じられないことなのに……。ローズは内心戸惑いながらも、無言で真っ赤になった手首をさすった。
「牧師様に、そんな言い方はやめてください! あなたが何をお考えになっているのかわからないけれど、わたし達はそんな……」
「わからない? じゃあ、こうして見ようか?」
