一年前、自分が黙って屋敷を出たことへの腹いせだとすれば、実に子供っぽい話だ。

 それとも自分には結婚とは別の関係でも求められているのだろうか? 
 
 だがそんな関係は、彼女が受けた厳格な教育とモラルが許さなかった。

 これからどうしたらいいの? 

 さっぱり頭に入らない本を脇に置くと、ローズは立ち上がって窓の外に広がる冬枯れの木立を眺めた。

 その風景は、今の自分の心をそのまま映し出しているようにわびしかった。彼の面影を胸に秘めたまま、長い人生をどうしたら一人ぼっちで過ごしていけるのか、今はまだ見当もつかない。

 ふいに、ノックがあり、キングスリー氏が夫人とともに部屋に入ってきた。

 ローズは慌てて身じまいを正した。こんなにも厄介をかけるのは予定外だった。すでに十日も居候しているのだ。