その時ノックがあった。子爵がドアを開くと、その家の執事が手紙を手に立っている。

 恭しく差し出された手紙を受け取り、再びローズの傍に戻ったとき、その顔に浮かんだ濃い疲労の色に気づいた。

「少し休むといい。続きはまた後で」

 子爵は手を伸ばし、枕の上で少し乱れたローズの髪を二、三度撫でつけながら惜しむように呟いた。

「こんなに短く切ってしまって……。あのシルクのような髪が好きだったのに……」

 一人になったローズは、話し過ぎたことを悔やんでいた。

 だが、こんな尋問が続いたら、遅かれ早かれ彼にすべてを話してしまうだろう。