やっぱり!
覚悟はしていたが少しも役に立たなかった。心臓を一突きにされるような衝撃を受け、ショックで声も出ないまま、しばらく目を閉じそっと呼吸を整える。
「どうした? 気分でも悪いのかい?」
彼はまだ容赦しない。
「それじゃ、あの方は? あなたのご婚約者のお嬢様はどうなったんです?」
次に目を開いた時、自分でも意外な質問が口をついて飛び出していた。彼の目が不信げに細められる。
「何の話だい?」
「あなたのお祖母様、老レディ・ウェスターフィールドが、おっしゃっていたわ。ウィルソン夫人もいっしょに……」
「ふーん」
彼は椅子をベッドの方へ心持ち動かした。ようやく彼女が鎧のように固めている防御の殻を破って話す気になったのか? これで彼女が突然失踪した原因がつかめるかもしれない。
「祖母や叔母が、君に何と言ったの?」
ローズは再び黙った。だが知りたい気持ちには克てなかった。あの方とのご縁組がどうなったのかそれを聞くだけ。そう自分に言い訳して言葉を継ぐ。
「あなたがダンバード侯爵のお嬢様と正式に婚約した……って」
