徐々に気分がよくなり、起きていられる時間も増えてきた。

 この間、ベッドについたローズに子爵は優しかった。高熱の後、まだ体力が戻らない彼女が起き上がるのに手を貸し、時には看護婦の代わりに食事を手伝ってくれさえした。

 だがローズは、もう必要以上に心を開くまいと、必死で壁を張り巡らせていた。彼の細やかな心遣いに心が痛む時も、負けまいと懸命になった。エヴァンが困惑しているのはわかっていたが、そうする以外方法がなかった。


 彼は以前より少しキングスリー家の者といる時間が増えていたが、まだおおむね、ローズのそばに座って本を読んでくれたり、自室に引きとって手紙を書いたりして過ごしていた。

 いったい、彼はいつまでここにいるのだろう?

 ある日、ローズは思い切って枕元に来た彼に尋ねた。

「ロンドンのお屋敷は……あなたがいらっしゃらなくても大丈夫なんですか?」

 エヴァンは椅子に腰を下ろすと、皮肉っぽい目で彼女を見た。 

「大丈夫だと思うけどね。執事や補佐がカバーしてくれているよ」

「こちらには、いつまで……?」

「もちろんこんな退屈な所からは、一日も早く引きあげたい。だから必要最低限の日数だけさ」

「……?」

「ぼくの花嫁となる人の準備が整うまでのね。ぼくはその人をロンドンへ連れに来たんだ。彼女にこんな田舎は似合わない」