全然、とばかりに目を見開いて首を振るローズに口付け、エヴァンは優しく微笑みかけた。

「君と一緒にいたい気持ちがどうにも抑え切れなくなってきて、とうとう君をウェスターまで連れて行ってしまった。マーガレットのことを口実にしてね……」

「まあ!」

「あとは君も知っての通りさ。君といるととても安らいで自然な気持ちになれる。貴族社会で鎧のようにまとった虚飾を脱いだ、本当の自分に戻してくれるんだ。ローズマリー、君を愛している。お願いだ。これ以上待たせないで欲しい」

 真剣な声にも眼差しにも、彼の変わらぬ思いは溢れていた。ローズはしばらく言葉も出せずに見つめていたが、やがて静かにこう言った。

「わたしもあなたを愛しています。あなたと結婚するわ」

「やったぞ!」

 その返事を聞くや、子爵が歓声をあげてローズをきつく抱きしめた。