恐る恐る問うと、エヴァンは驚いたように息をついた。

「君でいいかって? 君と出会って以来、ぼくには君しかいないのに。君のためにあんなに苦労したのに、まだ信じてもらえないとはね」

「でもわたしには、あなたに差しあげられるものが何もありません。あなたのお祖母様が貴族の結婚には家柄や財産が……、それに、ご親戚の方々も……」

「親族なんか放っておけばいいよ。今度は何も手出しはさせない。ぼくはウェスターフィールド家の当主なのだし、君はその伴侶になるんだ。もう祖母はいない。誰も文句など言えはしないさ。それにしても……」

 まったくね、と、彼はさらに大袈裟にため息をついた。

「君がぼくに何をくれるのか、君はまだ分かっていなかったんだね」

「……え?」

「ぼくはずっと孤独だった。もちろん両親はいたし、友人も、それに恋人もいた。だが心底安らげる時はなかったような気がする。子供時代は寂しかったよ。とても向こう見ずだったし、金には不自由しなかったから、ずいぶん遊んでもきたっけ。純真な君に話したら嫌われてしまうかもしれないけどね。だけどどこか違う、自分の求めるものがみつからなかった」