「二人で何かまた、よからぬことでも言ってたんだろうね?」

 ローズが少しはにかむように彼を見あげた。

「あれも最近すっかり生意気になってきて。そろそろ寄宿学校へ送ることを、真剣に考えるべきかもしれないな」

「そんな!」

 心配そうに呟く彼女の顎を片手で持ちあげると、身を屈めて優しくキスする。彼女の顔に元通り生気が戻ってきた。

「その調子さ。かなり元気になったね」

「ええ、あの……、そういえば授業、で思い出したんですが」

「何を?」

「エルマー様に、いつまでもお休みをいただいていていいのかしら。そろそろわたしも戻らなければ……」

 エヴァンは大袈裟にため息をつくと、黒髪をかきあげた。まったく彼女ときたら!

「エルマー夫人には別の家庭教師を探してもらうさ。君はもう二度とどこにも行かないよ。ここが君の《家》だと言ったろう?」