「先生がお帰りになられてからのお兄様の変わりよう、まったく目を見張るわ」


 マーガレットがローズの部屋でお茶を飲みながら、あきれたように首をすくめた。

ローズが子爵に抱えられてウェスターフィールド家に戻ったあの日から数日が過ぎ、今、すべてが順調に流れ始めていた。


「ここに戻って下さってよかったわ。先生がいなくなってからのお兄様、見ていられなかったの。あんまり痛々しくて」

 幼いマーガレットに真顔で言われ、ローズは思わず赤面した。

 あんなに意地を張る必要はなかったのかもしれない。もちろん問題が消えたわけではない。子爵家親族達は、頑なですぐには変わりそうもなく、未だに一度も訪ねてこなかった。

 だが、少なくともローズの中に、彼らに立ち向かうだけの気構えができている。それが一番肝心なことに違いない。