「アンダーソン達は逮捕されたよ。今ごろ奴らはヤードの留置場だ」

 何があったかを思い出し、ローズははっと目を見開いた。

「エヴァン……、来てくれたの……」

「そんなこと決まってる。いや、そもそもこの件に君を巻き込むなんて、考えてもみなかったのに。あいつが君を傷つけたのはぼくのせいだ。本当にすまなかった……」

「そんな……。もとはと言えば、わたしが騙されて、出て行ったりしたから……だわ」

 彼の指がまだローズの顔に残るアザと首筋の包帯にそっと触れた。

 エヴァンの顔も少し傷ついている。しばらく黙っていた彼が、やがていたずらっぽく微笑みかけた。

「そう、だけど、あいつもひとつだけいいことをしてくれたよ。どんなに説得しても耳を貸そうとしなかった、ロバみたいに頑固なぼくのお嬢さんに」

「え?」

「これで君はやっと《我が家》に帰ってきた。もう二度とどこにも行かせないよ。君がいるべき場所はここなんだ」

 ローズの目が大きく見開かれ、思わず言葉が飛び出した。

「でも……。あなたはもう、わたしのことなんか何とも思っていないんでしょう……? わたしが本当に馬鹿で何も見えていなかったから、とうとうあなたにあきれられて、愛想を尽かされてしまったと……」