「ローズマリー……」

 心配そうに自分を呼ぶ声がする。なつかしいあの人の声だ。これは夢ね、そう、いつか見たような夢。

「ローズマリー」

 もう一度名を呼ばれ、ゆっくりと目を開いた。大きな窓にかかるカーテンの隙間から、明るい昼間の光が差し込んでいる。

 ローズのぼんやりした視界に、覗き込んでいる顔が映った。誰よりも見たかった人の顔だ。

「気分はどう?」

「……ここは?」

「ウェスターフィールド邸の君の部屋さ」

「ウェスターフィールド邸……」

 理解できず、ローズはぼんやりと繰り返した。幾度か目をしばたかせるうちに、意識がようやくはっきりしてきた。

「動かなくていい。まだ動いちゃだめだ」

 エヴァンの手が髪を優しく撫で付けてくれる。