ローズの前で、さっきの男が銃を奪い返すと、まだ殴り合っているエヴァンに向けて構えた。

 ローズはとっさに「危ない!」と叫びながら、エヴァンの前に身を投げ出した。ほとんど飛び込むようにして。


 そして……。

 その後、何が起こったのかよくわからなかった。

 男が引き金を引くと同時に、その銃がぐわんと音を立てて破裂した。

 撃った男が苦痛の悲鳴を上げながら、血だらけの手で床を転げ回っている。

 ばたんと、ドアが勢いよく外から開いた。

 一気になだれ込んできたのは八人もの制服姿の警官達だった。あっという間に三人を包囲し次々に手を縛り上げていく。

 警察が来てくれた……。助かったんだわ。

 ほっと安心した途端、全身から力が抜けていった。

 ぐらりと前のめりに倒れかかったとき、力強い腕が抱きとめてくれるのを感じた。

 エヴァンは大丈夫だったのかしら?

 それだけでも確認したいのに、意識がどんどん暗闇に引きずり込まれていく……。