その様子を見るなり、ローズはさっと背筋を伸ばした。かつて教えられた完璧な作法で腰を屈めて一礼する。

「それでは、わたしはこれで……」

 テラスへ出ると、思わず目をぎゅっと閉じた。乱れた呼吸を懸命に整える。

「とっくにわかってたことじゃない。今さらショックを受けてどうするの……」

「風邪を引きたくなければ、今すぐ中へ戻るんだね」

 ふいに、すぐ傍からエヴァンの声がして、ローズは思わず飛び上がった。

 彼はテラスをぐるりと囲む柱の一本に軽くもたれていた。

 相変わらず何を考えているのか、つかみどころのない表情をしている。

「これが終ったら、君とゆっくり話し合いたいと思ってね。それまでここにいてくれるだろう? 今はお互いにこの再会パーティを楽しもうじゃないか。おいで、ローズマリー」

 これ以上あなたの傍にいられないって、はっきり言わないとわからないの?

 内心でどんなに叫んでも通じるはずもない。彼は優雅に片手を差し伸べている。

「これ以上、からかわないでください……」

 そう、彼はからかって楽しんでいるだけ。ローズは未練を断ち切ろうと、頭を左右に振っていそいで答えた。

「わたしなんかとんでもない! ミス・キングスリーがお待ちでしょう? どうぞホールに戻ってください。わたし、疲れたのでもう帰ります」

「それじゃ、君の家まで送っていこう」

「いいえ、結構です!」