エヴァンはキャビネットの引き出しからよく手入れされた拳銃を二丁取り出した。

 大きいものと、レディでも扱えそうな小ぶりのもの。銃弾をこめたあと、大きい方に細工をしてから敵の目にとまりやすそうな懐中のホルダーに納めた。

 おそらくこちらは奪われるだろう。その時こそ役に立つ。小ぶりの銃はベストの下に目に付かないように挟み込んだ。

 彼女に少しでも手を出してみろ、命の保証はしないぞ。


 御者を呼ぶと、彼は妙におどおどと視線をそらせている。帰宅時とはうって変わり、異常に落ち着きがなくなっているのを見て不審に思った。途端にはっと気が付く。

「お前……、もしや何か知っているのか?」

「だ、だ、旦那様……も、申し訳もございません、あっしは何も知らなかったんで!」

 顔を強張らせたエヴァンの前にがっくりひざまづくと、御者はぶるぶる震えながらエルマー邸の前で工場長に会ったときのことを話し始めた。

 主人の眼に一瞬殺意が浮かんだ気がして震え上がる。

 だが、彼はたちまちもとの無表情に戻った。