ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜


 いつもと同じ、飽き飽きするようなクラブの催しを早めに切り上げて、エヴァンが屋敷に戻ってみると、邸内の様子がおかしかった。

 いつも落ち着き払って出迎える執事が、慌てふためいて飛び出してくる。

「だ、旦那様! お早いお戻りでよろしゅうございました。今、カーターさんのご指示で、そちらに人をやったところでございます!」

「何かあったのか?」

 滅多にない執事の狼狽ぶりに、エヴァンは眉を潜めながら行き過ぎようとする。

「ミ、ミス・レスターが……、その……」

「彼女に何か?」

 ぎくりとして思わず立ち止まった。

「さらわれたようですね、どうやら元工場長、アンダーソンに」

 はっとして振り向くと、カーターが手紙を手に立っていた。

 差し出されたそれを無言でつかみ取り目を通しはじめた途端、まさかというように大きく目を見開く。

 二回読んで思わず手紙を握り潰した。握りしめた拳がぶるぶる震え始める。