ローズはいそいで夫人の部屋を辞した。

 ああ、これ以上何を聞いても驚かないと思っていたのに! 彼が自分を推薦してくれたなんて。道理で早く決まったわけだ。

 部屋に戻ると、ベッドに身を横たえた。けれどとても眠れない。抑え切れない涙がまた溢れ出し、彼への思いで胸がいっぱいになってくる。

 壁にかかった美しいドレスをじっと見つめた。彼に会いたくてたまらない。

 だが口に出してしまった言葉はもう取り消せない。彼への思いを胸の奥に秘めたまま、これから一人で生きて行こう。

「エヴァン、愛してるわ……」

 ローズは夜の闇に向かい、そっと囁きかけた。