「もちろん、多少のことは覚悟の上です。彼女を知らない間は悪く言う者達も出るでしょう。だが、彼女は芯が強い人です。また飲み込みも非常に早い。今はまだ歳も若いですが早晩彼らを上手に裁くこつをつかんでくれると信じています。それまでは、わたしが精いっぱい手助けし、かばっていくしかないと思っております」

「王家とも遠縁にあたる我が愛娘より、そんな娘の方を選ぶとはな。ウェスターフィールド家もまったく末だの。これでは、大事な娘を任せるわけにはいくまい」

 侯爵が辛辣な口調の中に煌かせたユーモアを感じ、エヴァンはようやく小さく息をついた。自分でも気付かぬうちに息を詰めていたのだ。再び微笑して答える。

「そうかもしれません」

「本当に本気なのね。その方は今どちらに?」 

 熱意のこもった彼の言葉を聞くうちに、アンナの中で次第に怒りが解けて、感動さえ覚え始めていた。

 もともとエヴァンとは幼友達なので、彼の性格はよく知っている。彼がこれほど熱心になった時には、どんな障害があっても克服し、必ず見事に成し遂げてしまうことも。

 怒りはもう解けていた。アンナに向けた子爵の顔に、滅多にない優しい笑顔が浮かぶ。