「どうしてそれを……、ご存知なんですか?」

 訳が分からず、呆然と問い返すローズに、アンナは小さくため息をついた。

「おととしのことだったわ。ウェスターフィールド家でのパーティの後、わたくしはあの人を連れて、父に会いに行きましたの。ご存知かしら?」

『あの後アンナを送って、侯爵邸まで行かなければならなかった。……しかも侯爵からやっかいな話を持ち出され、すぐ屋敷に戻ることもできなかった……』

 そういえば、あの時エヴァンが言っていた。そう思い出してうなずく。

「父が、彼の気持ちを早くはっきり知りたがったからなの。あの頃わたくしと彼の間に結婚話があったことは……」

「はい、知っています」

 今度はローズもはっきりと答えた。アンナもうなずいて真剣な顔で続ける。

「父の前であの人ははっきりと答えたわ。とても勇気がいったと思うけど」

 そう言って、アンナはその夜の出来事をローズに語り始めた。