二人とも、まるで何か事情を知っているような口振りだ。

 ローズ一人、訳も分からず完全に戸惑っていた。その様子にようやくアンナもまじめな顔になる。

「シャーロット、申し訳ないけれど少しはずして下さいません? わたくしミス・レスターと二人きりで、お話したいことがあるの」

「わかりましたわ。どうぞごゆっくり」

 エルマー夫人が快く退出すると、二人は優美なサロンのテーブルを挟んで静かに向かい合った。


 大きな窓から午後の陽射しが穏やかに差し込んでいる。


 アンナはエルマー夫人が出ていったのを確かめてからローズに向き直ると、いきなり非難めいた口調になった。

「あなたがウェスターフィールド子爵のご婚約者ですわね。どうしてエヴァンとまだご結婚なさらないの? その上家庭教師だなんて……、到底レディ・ウェスターフィールドにふさわしいとは言えないわ」

「えっ?」

 ローズはただ驚きの目を見張るばかり。

「あら、いきなりだったかしら? でも、あなたがエヴァンと婚約なさったのはもうずいぶん前でしょう?」