「ぼくは自分のこの目で、すべてを確かめながらやっていくつもりだよ、アンダーソン」

 エヴァンが低い静かな声で相手の言葉を引き取った。落ち着き払っているだけにいっそう抑えた憤りを感じさせる。

 脇からカーターが工場長の前に一枚の紙切れを置いた。見るなりアンダーソンは一声唸って目をむいた。

「君の屋敷を譲渡する書類だ。ここにサインすればよし。さもなくば警察に君の身柄を拘束して、余罪まで徹底的に調べ上げるからそのつもりで」

 エヴァンの眼が冷徹にきらめいた。アンダーソンが震える手で契約書にサインすると、カーターが頷く。

「な、生意気な若造どもが……、こんな真似をして、ただでは済まさんぞ。覚えてるんだな」

 子爵が机上のベルを鳴らした。すぐ様やってきた召使が二人がかりで、なおも大声で悪態をつき続ける元工場長を邸内から放り出した。