「工場長、この報告書の意味を、ぼくにわかるように説明してもらいたいね」

 帽子を手に渋い顔つきで、ウェスターフィールド子爵邸の書斎に入ってきた工場長のアンダーソンに、エヴァンはいきなり冷やかな視線を向けた。

 いつもの主人の気さくな態度が、今日はすっかりなりを潜めている。

 瞬間的にアンダーソンは形勢の不利を悟った。まずいことに後ろ暗いところなら山のようにある。

 精一杯の落ち着きを見せて怪訝な顔をつくろうと、片眼鏡を直して雇い主から差し出された数枚の書類に目を通した。

 その間も目の前の若い貴族は、両手を後ろ手に組んだまま、激しい怒りを帯びたダークブルーの瞳でこちらをじっと見つめている。

 傍らには、目障りな補佐役の男が静かに立っていた。

「はてさて……、いったいなんのことやらさっぱり」

 ハンカチを出して知らぬ間に滴っていた汗をぬぐいながら、工場長は二人の前で懸命に落ち着きを保とうとしたが、無駄な抵抗に終わった。

 いきなりずばり切り込まれてびくっと飛び上がる。