本当に馬鹿な娘だよ、と小声でこぼすオリビアを目で制し、ハワード氏はぼんやり食卓に座っているローズと手のつけられていない皿を見やった。

 もう二階で休ませるよう妻を促す。


「眠ったようですよ」

 しばらくして、ランプを持って階段を降りてきた夫人が夫に報告した。

 ハワード氏は居間でパイプを吹かしながら、暖炉の火を眺め考え込んでいた。

 パトリックも父の向かいに座って天井を睨んだまま、額に皺を寄せている。

「どうしているかと心配していたが、まさかこんなことになっているとはな……」

 オリビアが二人に熱いお茶を運んできた。



 ウェスターフィールド邸では、前触れもなく戻ってきた主人を迎え、メイド達が忙しく動き回っていた。

 だが当の子爵は暗い表情のまま、妹や執事の心配そうな眼差しにも何も答えず、そのまま寝室に閉じこもってしまい、食事にも姿を現さなかった。