「……わたしの気持ちは以前から少しも変わりません。ミス・レスターに継続して結婚を申し込んでいますし、承諾してもらえるなら、すぐにも式を挙げたいくらいです」

 しばらくの間、伯父夫婦はただ呆気に取られ、ローズと子爵を見比べるばかりだった。

 若き子爵は、強い意志のこもった決然とした態度を示しており、その隣でローズは、今にも泣き出しそうに唇を震わせている。

「も、も、もちろんでございますとも! 何でこの娘に異存が……」

 申し込みを撤回されては大変と、大急ぎで承諾しようとする妻を抑えて、ハワード氏は姪に尋ねた。

「それで、君は何とお返事したのかね」

「……結婚はできませんと、お答えしました」

 ローズは震える声でそれだけ答えると、立ち上がって客間から出ていった。

 息を呑んだオリビアの横でハワード氏が深いため息をついて、硬い表情で後姿を見送る子爵に声を掛けた。

「閣下。あの娘に対し、そこまでおっしゃってくださるとは、本当に感謝の言葉もございません。ですがあの子も自分の立場をよくわきまえているのでしょう。だからこそ、その名誉あるお申し出を、お断りしたに違いないのです」