一人になったローズは両手で顔を被って近くの椅子にくずれるように座り込んだ。

 泣くまいと必死に押さえていたが、ついにこらえ切れずに涙が溢れ出す。

 エヴァンを傷つけている。

 自分などのために一年も費やし、おそらくイングランド中を探してくれた彼を――。

 それほどの価値が自分にあるとは、とても思えないのに。こんな思いをするくらいならいっそ、愛人になれとでも言われた方がどんなにましか、と思ってしまう。

 だが、彼はプロポーズを繰り返すばかりだったし、それには二度とイエスと答えられそうになかった。


 その日の夜、ついにローズは一歩折れた。それならロンドンに住む伯父夫婦のもとへ自分を送ってほしいと頼んだのだ。

「君がぼくの邸に来る前に、少し厄介になっていたと言う伯父さんの家?」

 エヴァンは考え込みながら彼女を見た。今日は顔色があまりよくない。かなり疲れているようだ。

 そしてその申し出は道理に適ったものでもあった。結婚前から同居しているのでは良い風聞は立たない。