同じ一日を過ごしながら、彼女がそんなことを考えていたとは……。少なからず衝撃を受けて、エヴァンは低い声で遮った。

「そんなことばかり言っていると後悔することになるよ。君はぼくのものだ。それは一年前から決まってる。こんなに時間をかけてやっと捕まえたのに、今またあっさり手離すと思ったら大間違いだね。だいたいなぜ、そんな馬鹿なことを言い出すのか、さっぱり理解できないな」

 ローズは悲しそうにうつむいた。

「考えてみてちょうだい。今さらどうやって、わたしがあなたと結婚できるというの? それを上流社会のどなたが認めてくれると思います? あのパーティの日、わたしにはそれがはっきりわかったの。もっと早く気づくべきだったのに……遅すぎたわね。本当にあなたの隣に立つ女性は、身分もあり自信があって、何でもおできになる社交界の花のような方――そう、レディ・アンナのような方がふさわしいのよ。エヴァン、あなたを愛しているわ。これ以上愛せないくらい……。だからこそ、あなたの足手まといや、頭痛の種になったらと思うと……」