「指輪はどうした?」
「ここです……。鎖に通しています」
襟元を抑え、少しはにかんだように微笑む。その答えに安心し、期待を込めて彼女を見た。
「それじゃ、とうとうウェスターフィールド家に戻る決心がついたんだね?」
ローズは目を伏せ、しばらく答えなかった。
「お願い。今はその話はしないでほしいの」
それだけ言うと「バスケットを取ってきます」と部屋から出ていった。
エヴァンは更に問い詰めたいのをぐっと抑えた。今は様子を見るしかないと自分に言い聞かせる。
乗馬服にマントを羽織って出てくると、ローズは既にバスケットを手に待っていた。
金髪をふんわり垂らし、いつもの黒いマントを着けている。生き生きと輝く瞳に見とれたくなる自分を叱責しつつ、彼はローズを助けて鞍の前に座らせ、自分もその後ろにまたがった。
彼女の髪の甘い香りが鼻をくすぐり、触れ合う身体のぬくもりを感じる。
「そんなに遠くまでは行けないからね」
彼は慌てて一声かけると、馬を走らせ始めた。
