子爵は意外そうに彼女を眺めてから、無言で肯いた。
「それでまた、何を始めたんだい?」
驚いてしきりに言い訳を口ごもるサラと、フライパンから卵をすくい取って、皿に載せているローズを見比べ、子爵はやんわりと問いかけた。
「あまりサラを困らせてはいけないよ。こっちへおいで、ローズマリー」
ローズを厨房から連れだそうと近づいたが、彼女はそのまま朝食を盛りつけた皿を盆に載せ、テーブルまで運んでいく。
「お腹がお空きでしょう? もう十時ですもの」
食事のテーブルを整えながら、にっこりと微笑む。
エヴァンは面食らったが、やがて彼女を捕まえるとそっと身をかがめた。ローズも彼に身体を寄せて、自分からその首に腕を回す。
やがて身体を離すと、彼女をつくづくと眺めた。
「ずいぶん晴れ晴れした顔になったね。いいことでもあったのかい?」
頬を赤らめながら、ローズは給仕を続けた。
たちまち焼きたてパンとハム、ジャガイモのスープ、そしてオムレツ、絞りたてのミルクが彼の前に並ぶ。
