夜半過ぎ、浅い眠りから目を覚ましたローズは、身体に回された腕の中で、そっと寝返りを打った。

 彼は傍らでぐっすり眠っていた。無理もない。彼にとってどんなに大変な一日だったろう。

 エヴァンの寝顔を見ているうちに、彼の表情にいくつか変化が現れていることに気づく。

 再会した時から、彼の上にいつもあった孤独の影が和らぎ、表情が柔らかく穏やかになっていた。


 愛しているわ……。


 小さな声で呟いてみる。わたしはこの人のものだ。これから先、たとえどうなろうと、それだけは一生変わらない。

 
 だが、彼について子爵邸に戻ることは、やはりできそうもなかった。

 彼のためにも、自分などいない方がいいことは分かり切っている。

 自分にレディ・ウェスターフィールドが務まるはずがないからだ。