すべて終わった……。

 最後にローズは引きつった顔をあげ、残されたプライドをかき集めて精いっぱい胸を張り二人を見た。

「お心遣い感謝します。ですがこれは必要ありません」

 静かにそう言うと、お金の袋を下に落とした。

 ローズはそのまま豪華な奥の間を後にした。自分の部屋に戻ると、大急ぎでささやかな荷物を木のトランクにまとめる。


 夜半過ぎの月明かりの中、ローズは引き裂かれた心を抱えてウェスターフィールド邸を後にした。

 静まり返った石畳の道に、馬車の轍の音だけが悲しく響いた。