この上なく贅沢な部屋――。

 第一印象はまさにそうだった。壁の装飾、肖像画、刺繍されたカーテン付きの豪華な広いベッド、カーテンは閉まっている。

 マホガニーのテーブルと化粧ダンス。皮ばりの椅子。珍しい東洋の置物まであった。

 そして、凝った装飾の美しいランプの光の中で、ローズはベッドの傍らに立ち、憤怒の表情で自分を睨みつけているウィルソン夫人を見た。

 考える間もなく膝を折って礼をする。だが再び顔をあげる前に、夫人の言葉は鞭のようにローズを打った。

「あなた、おとなしげな顔をして、よくもエヴァンを誘惑したものですね」

「………」

「あなたはマーガレットの家庭教師だというではありませんか。たかが家庭教師ごときにうつつを抜かし、結婚するだなどと言い出すなんて! エヴァンも恥を知るべきです。よくもウェスターフィールド家の家名に泥を塗るような真似を……」

 激しい憤りと興奮のあまり、ウィルソン夫人はわなわなと震え出した。

 言葉だけで収まらないように、つかつかと歩み寄ってくると、うつむいたままのローズの顔に、平手打ちをしようと手をあげた。

 その時、ベッドからしわがれ声が飛んだ。