すると今度は、そばに座っていた中年の奥方達が微笑みながら彼女を値踏みし、出身はどこだ、そのドレスはどこで仕立てたのかなどと、たずねてくる。

 あれこれ店の名前を挙げては時折くすくす笑う。

 ローズは何とか取り繕って再び席を離れた。

 会話のレッスンはしたけれど、この雰囲気にはとても馴染めそうにない。

 やがて音楽が始まり、目の前で幾組ものカップルが踊り始めた。シャンデリアの灯火の下、室内楽に合わせて動いていく人々の豪華さに目眩を感じた。

 やっぱり、世界が違う。

 いくら宝石やドレスで着飾っても、所詮自分はしがない家庭教師でしかないと、つくづく思い知らされる気がした。

 その時目の前に気取った若者が立った。

「麗しきレディ、よろしければ一曲、お相手していただけますか」

 思わず子爵を見たが、彼はまだ親族に取り囲まれたまま深刻そうに話している。

 ためらっているとその紳士に腕を取られ、ホールへ連れ出されてしまった。仕方なく教えてもらったステップをふんで踊り始めた。